そもそも社会保険とは?
社会保険制度とは、国(厚生労働省)が管理監督者となって行っている社会保険事業で、病気、ケガ、身体の障害、死亡、老齢、失業などが起きたときに、保険制度の加入者やその家族に対して保険給付を行い、生活を保障する制度です。
社会保険制度は、雇用保険、労災保険、健康保険(介護保険)、厚生年金保険など様々なものがあります。
これら全てを総称して広い意味で「社会保険制度」と言っています。
狭い意味では雇用保険と労災保険を併せて「労働保険」と言い、年金保険である厚生年金保険と医療保険である健康保険(介護保険含む)のことを「社会保険」と言います。
会社設立に伴う社会保険への加入義務
社会保険に加入しなければならない会社の要件は、「労働保険」と「社会保険」とで若干異なります。
○労働保険
労働保険は、従業員が一人でもいれば強制加入となります。役員しかいない会社の場合は、逆に加入することが出来ません。労働保険は、労災保険と雇用保険にわかれますが、雇用保険に加入できるのは、週20時間以上で6ヶ月以上働く見込みがある方のみです。よって、週20時間未満のアルバト飲みの場合は、労災保険のみ加入することになります。労災保険への加入は、どんなに労働時間が短くても労働者の全員が加入することになります。
労災保険や雇用保険にも加入していない会社がみられますが、これは非常に危険なことです。雇用保険や労災保険の保険料は、社会保険(健康保険・厚生年金)に比べて非常に安いです。保険料額は低いのですが、その給付はとても厚く、この保険料で同等の給付が出来る民間の保険はありません。
労災保険に加入していない間に労災事故が起こった場合は、会社がその全額を負担しなければなりません。これは治療費だけでなく、その間の給料も補償しなければなりませんし、働けないからといって解雇することもできません。例えば、骨折などで2ヶ月休んだとすると、その間の治療費と給料で数十万円も会社が負担しなければならなくなります。これらの補償をわずか一人当たり月額数百円から多くても数千円の保険料でまかなえるのであれば、絶対に加入すべきです。
労働保険の加入義務
労働者5人以上 |
労働者5人未満 |
|
法人(株式会社や合同会社など) |
強制加入 |
強制加入 |
個人事業(農業・漁業) |
強制加入 |
任意加入 |
個人事業(農業・漁業以外) |
強制加入 |
強制加入 |
※1 役員のみで従業員がいない場合は加入不要
※2 個人事業主1人の場合は加入不要
○社会保険
株式会社や合同会社・有限会社といった法人の事業所の場合は、業種等は関係なく役員又は従業員が一人でもいれば強制加入となります。強制加入とは、社長や従業員の入りたい・入りたくないという意思に関係なく、必ず加入しなければならないという意味です。
ここで言う従業員とは、純粋な意味での従業員ではなく、社長や役員も含めて会社で働く方を指します。よって、社長1人しかいない会社であっても強制加入となります。
また、社会保険のうち、厚生年金には加入せずに、健康保険だけ加入するということは原則できません。
個人事業の場合は、一定の業種の場合は5名以上の従業員が働いている場合は、法人の事業所と同じように強制加入となります。なお、強制加入の場合でも個人事業主自身は社会保険に加入することは出来ません。
強制適用事業所以外の事業所、例えば個人事業で5名未満の事業所は任意加入となります。任意加入とは強制加入と違い、希望しなければ加入する必要がありませんし、逆に希望すれば加入することができます。
社会保険の加入義務
労働者5人以上 |
労働者5人未満 |
|
法人(株式会社や合同会社など) |
強制加入 |
強制加入 |
個人事業法定16業種※2 |
強制加入 |
任意加入 |
個人事業法定16業種以外※3 |
任意加入 (希望すれば加入できる) |
任意加入 |
※1 法人は役員のみで従業員がいない場合でも、強制加入
※2 法定16業種とは以下の業種をさします。
○ 物の製造、加工、選別、包装、修理又は解体の事業 |
○ 土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊、解体又はその準備の事業 |
○ 鉱物の採掘又は採取の事業 |
○ 電気又は動力の発生、伝導又は供給の事業 |
○ 貨物又は旅客の運送の事業 |
○ 貨物積卸しの事業 |
○ 焼却、清掃又はとさつの事業 |
○ 物の販売又は配給の事業 |
○ 金融又は保険の業務 |
○ 物の保管又は賃貸の事業 |
○ 媒介周旋の事業 |
○ 集金、案内又は広告の事業 |
○ 教育、研究又は調査の事業 |
○ 疾病の治療、助産その他医療の業務 |
○ 通信又は報道の事業 |
○ 社会福祉法に定める社会福祉事業及び更生保護事業法に定める更生保護事業 |
※3 法定16業種以外とは以下のような業種をさします。
・第一次産業(農林、水産、畜産業)
・接客娯楽業(旅館、料理店、飲食店、映画館、理容業等)
・法務業(弁護士、税理士、社会保険労務士事務所等)
・宗教業(神社、寺院、教会等)
注意点
会社設立した場合、労働保険・社会保険へは原則、強制加入です。しかし、現状は会社組織であっても社会保険に加入していないケースが多々見られます。現在、社会保険庁はそういった強制加入でありながら加入していない会社に対しての調査を強化しており、2年分さかのぼって加入させて、数百万円から数千万円の保険料の支払命令を出しています。そうならないためにも、会社設立した場合は、速やかに社会保険の加入手続きをとりましょう。
また、助成金は、労働保険・社会保険へ加入していなければ受給できないものがほとんどですので、助成金を受給する場合も必ず社会保険へ加入します。
税理士 松原 昌基 |
社会保険労務士 行政書士 吉田 勝 |
司法書士 青木 康進 |